ひな人形のあれこれ

ひな人形の歴史

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我が家には5歳になる娘がいます。男兄弟2人で育った私(男)は女の子の慣習になじみが無く、戸惑うことばかりです。そして、最初に訪れたイベントが雛祭りでした。雛祭りとは、女の子が健やかに成長してほしいと願い行われる日本の伝統行事です。では、雛祭りの主役である雛人形にはどのような歴史があるのでしょうか?

雛人形の始まりは正確には分かっていませんが人形の存在は古くからあり、縄文時代には土偶と呼ばれる土製の人形を、豊作の神様として崇めていました。また、弥生時代には藁に布を被せた「天児(あまがつ)」「這子(ほうこ)」と呼ばれる身代わり人形、古墳時代には埴輪(はにわ)が作られました。そして奈良時代には、紙や藁で作られた人形(ひとかた)が多く作られるようになりました。このような人形信仰が、現在の雛人形にも受け継がれています。

雛人形の人形の起源になったと言われているのは、平安時代の「雛(ひいな)遊び」です。ひいな遊びは、紙で作った御殿の中で紙で作った人形を遊ばせる人形遊びで、貴族の女の子に流行っていました。そして、安土桃山時代になると、3月3日の桃の節句に祭りを行うようになり、この頃には祭りの呼び名も「ひいな遊び」から「ひな祭り」へと変わっていったそうです。

江戸時代になると、男雛と女雛を立った状態で飾る「立ち雛飾り」が作られました。その後、立ち雛が座り雛に変わるとともに、人形の作りや衣装が凝ったものになっていき、職人がその技を競い合っていました。その流れから宮中の華やかな衣装を再現したものが作られるようになり、これは古今雛(こきんびな)と呼ばれ、今の雛人形に近い姿になりました。その後は、五人囃子や官女などの添え人形や、嫁入り道具などの添え道具も作られるようになり、その頃には武家や宮廷のみでなく、庶民の間にも少しずつ浸透していきました。

明治時代になると、人々は雛人形の大きさや豪華さでその家の権威を誇示するようになり、派手で大きな雛人形が増えていきました。しかし大正時代中頃にはそのブームも落ち着き、小さな雛人形、人形と道具がセットになったもの、御殿飾りとセットになったものなどが流行しました。

そして昭和時代、戦後の復興が進むにつれ、再び15人すべてがセットになった7段飾りのものなど、豪華なお飾りが流行しました。しかし平成になると、住宅環境の変化、核家族化などもあり、小さな雛人形が増えて来ています。

ひな人形の種類

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雛人形の顔の種類で最も流通しているのは石膏であり、型に石膏を流し込んで成型し胡粉で仕上げます。型に流し込むと聞くと、工場で大量生産をしているイメージをされるかもしれませんが、型を使用することで表情のばらつきを抑え、表情の良いものを安定して生産できるという利点もあるのです。また、伝統的な製法としては、桐の粉を固めて胡粉で仕上げる桐塑頭というものもあります。この桐塑頭は全く型を使わないため、時間と費用を要します。しかし、質感が独特で、顔や表情が一体毎に微妙に違い、年月を重ねるごとに深みが出てくるため人気があります。さらに、最近ではプラスティック製のものもあります。

雛人形の着物は、実際に人が着用する着物や帯を使って仕立てる場合と、人形用に織られた反物を使って仕立てる場合に分かれます。実際に着用する着物や帯を使う場合は、無駄になってしまう部分が多くなり、高価な雛人形になってしまいます。それに比べ人形用に織られた反物を使う場合は、反物に無駄があまりでないため、価格を抑えられる傾向にあります。また、表着の生地の種類だけではなく、下着や十二単の重ねの生地の種類、着付け方によっても価格は変動します。

飾り方にも様々な種類があります。まずは七段飾り。七段に緋毛せんと呼ばれる赤い布を掛け、15体の雛人形を乗せた飾り方です。七段は大きすぎて仕舞うが大変です。そこで生まれたのが三段飾りです。雛人形はずいぶん減って5体。親王(殿、姫)と官女のみであり、上段二段に飾り、三段目は道具を並べます。5人囃子を三段目に並べ、道具を並べない変則パターンもあります。また、三段飾りをさらに簡素化した平飾りもあります。親王(殿、姫)だけを平面的に並べる飾り方で桜橘や道具を一緒に並べることもあります。最近よく見るようになってきたのはケース入り雛人形です。埃がかからないのがメリットですが、ケースはガラス製のものが多いため、割れてしまう可能性があるというのが欠点です。また、数年前から見られるようになった飾り方として、収納飾りがあります。人形は親王(殿、姫)のみであったり、官女も含めて5人であったり様々ですが、台自体が収納ケースになっているものです。今まで座っている雛人形を紹介しましたが、古くは紙雛、神雛と呼ばれる立雛が一般的でした。段飾りではなく親王飾りとして飾るのが一般的で、高さがあり非常に存在感がある飾りかたです。

ひな人形のサイズの単位

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ひな人形のサイズは、関西と関東、「京」が付く付かない、作った作家、工房など色々な条件によって呼び方が違ってきます。関東風の呼び方では、大きい順に、八番、九番、十番、小十番(工房によってないところもある)、大三五、三五、小三五(大芥子)、芥子、豆、柳となるのが一般的です。また、京風の呼び方では、大きい順に、京七番、京八番、京九番、京十番、京十一、京十二となります。

京都を意味する『京』の文字が付くことで、関東風より一回り小さいサイズのことを表します。また、歴史ある京都の職人は、更に一回り小さい雛人形を指す場合があります。ちなみに、一般的に一番人気があるのは「大三五=京十番」です。このような呼び名が一般的ですが、関東でも十番のことを京九番と読んだり、九番を京八番と呼ぶこともあります。なぜこんなに分かりにくいことになっているかというと、歴史ある雛人形は、それぞれの職人、工房によって、独自のサイズがすでに根付いています。よって、今更サイズの呼び方を変えてしまうと、小売店、問屋さんが混乱してしまいます。そのため、昔からの自社での呼び名を優先しているため、私たち買い手が混乱してしまうという事態になってしまっているのです。

では、雛人形のサイズはどのように選べば良いのでしょうか?当然、飾り台の大きさにより人形のサイズは限られてきます。しかし、例えば同じ80㎝の飾り台でも、ゆったりと飾りたい方は京十番(大三五)、また大きい人形を詰めて並べて迫力を出したい方は京十一番を選ぶなど、同じ飾り台のサイズだとしても様々です。また、雛人形はデザイン優先でサイズは気にしないという方もいると思いす。しかし、何といっても雛飾りの主役は雛人形ですので、飾り台ではなく人形の大きさを先に決める方が最も多いと思います。

ここで、大きさの考え方が分からなくならないように、覚え方のヒントをお教えします。それは、番号を分数にして覚えることです。例えば、京十番のサイズは人間の10分の1、京十一番のサイズは人間の11分の1、という感じです。また、飾り台のサイズについてもご説明します。昔から飾り台のサイズは、横幅で120cm、105cm、90cmが主流でした。しかし昨今では少し小さくなり、80cm、75cm、60cmのサイズが人気です。ちなみに、一番人気があるのは75cm幅のものであり、5人飾り、殿姫二人を飾るのが一般的です。

<尺>という単位を用いる場合もあります。
1尺=約30㎝

ひな人形のサイズ名称(関東編)

<小さい>
芥子
小三五
三五
大三五
小十番
十番
九番
八番
<大きい>

ひな人形のサイズ名称(関西編)

<小さい>
京十番
京九番
京八番
京七番
<大きい>

ひな人形の飾り方

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京都(関西)と関東では、最上段のお内裏様の飾り方(右左)が異なります。また、7段飾りでは最上段以外の人形や道具の飾り方にも違いがあります。ここでは、京都と関東の違いを中心に、雛人形の飾り方について説明します。

前述した通り、まず最上段に飾る男雛と女雛の左右の位置が地域によって異なります。京都風では、男雛が向かって右側。関東風では、女雛が向かって右側と、真逆になります。男雛を向かって右側とする京都風が昔ながらの飾り方で、女雛が向かって右側とする関東風は比較的新しい飾り方という説もあります。

ここでは、7段飾りを例に飾り方を説明します。ではまずは1段目の飾り方についてご説明します。1段目には男雛と女雛を飾ります。男雛と女雛は親王台(しんのうだい)に乗せ、後方には金屏風を立てます。男雛については、冠の纓(えい)が真っ直ぐになるように飾り、右手には笏(しゃく)を持たせ、左腰の袖には太刀(たち)を差します。女雛については、開いた状態の桧扇(ひおうぎ)を両手で持たせます。最後に、二人の両脇にぼんぼりを立て、二人の間か前に瓶子(へいし)を飾ります。

2段目には三人官女を飾ります。持っている道具が、向かって左から加銚子、島台、長柄銚子という順になるよう並べます。豆知識として、左右に位置する三人官女は、外側に来る足が少し前に出ていることを知っておくと間違えにくいかもしれません。

3段目には五人囃子を飾ります。持っている楽器が、向かって左から太鼓、大皮鼓、小鼓、笛、扇という順になるよう並べます。向かって左の人形ほど持っている楽器が大きいと覚えて下さい。ちなみに一番右の人形は、謡い手さんなので楽器ではなく扇を持っています。

4段目には向かって右側に左大臣、左側に右大臣を飾ります。左大臣はお爺さん、右大臣は若者と覚えて下さい。

5段目には仕丁(しちょう)を飾ります。向かって左から台笠、沓台、立傘の順番です。左から、熊手を持つ怒り上戸、ちり取りを持つ泣き上戸、ほうきを持つ笑い上戸と覚えて下さい。

6段目と7段目にはお道具を飾ります。ただし特に明確な決まりごとは無いようです。一般的には、上の段(6段目)にお化粧道具、たんす、食器などを置き、下の段(7段目)にお駕籠(かご)や御所車を置くとバランスが良いようです。最後に、桜を向かって右側(左大臣側)に、橘(たちばな)を向かって左側(右大臣側)に置き、完成です。

今流行りのお雛様

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雛人形にも流行があります。その一つが人形の大きさです。例えば、昭和の中期から後期には豪華な雛人形が好まれ7段飾りが流行りました。しかし今では、小さな雛人形が流行しています。その理由として考えられるのは住宅事情です。昨今はマンションや狭小住宅に住む家庭も増え、飾る時や収納時にスペースを取らないコンパクトなものが好まれるようになった理由のひとつです。片付けが簡単なのも魅力です。また、若者を中心に、スタイリッシュな生活を好む人が増え、小さくておしゃれな雛人形ということで、大きさよりおしゃれを優先した結果、小さな雛人形を選択されるようです。

雛人形の顔にも流行があります。基本的に雛人形は、子供さんの雰囲気に合うものを選ぶことが多いのですが、最近では日本風のみでなく大きな目が特徴の西洋風な顔立ちの顔も流行しています。中にはハーフの顔立ちをして着物も袖や襟にレースを使った雛人形もあり、20代から30代の若いお母さんを中心に人気が出てきているようです。これからは西洋風やハーフの顔立ちが主流になる時代もくるのかもしれませんね。その他には、まつ毛の長い雛人形などもあるようですが、高齢者の方などにとっては、少し抵抗があるのかもしれませんね。

また、着物の色にも流行があります。男雛は黒か紺色の着物、女雛は赤い着物というのが定番でしたが、今は濃い色のものだけでなく、パステルカラーなど色が淡いものが流行しています。また、着物は色だけでなく、生地のこだわりも強くなっており、刺繍などにより立体的かつ鮮やかな装飾がほどこされた着物が流行しています。

流行について記述してきましたが、一般的に雛人形は親御さんからプレゼントされることが多いです。そうなると、雛人形を選ぶのは親御さんということも多いかと思います。その場合、もちろん悪気はないのですが、小さなものより大きなものを、西洋風より日本風の顔立ちの人形を、着物もオーソドックスな濃い色のものを、というようになりかねません。でも、娘さんの成長を末永く見守るものですから、やっぱり自分の好みの雛人形を飾りたいですよね。そんな時は、今の流行や自分の希望をそれとなく伝えてみましょう。また、最近ではお金だけ頂いて、自分達夫婦で雛人形を選ぶ方も多いようです。でもせっかくなら、ご両親、夫婦、娘さんみんなの好みを踏まえたうえで、納得する雛人形を選びたいものですね。

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